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トヨタF1が表彰台の頂点に立つ日
その2

第三章 "90年WSPC後半、苦悩するトヨタ。

ルマンで苦杯を舐めたトヨタトムスはWSPC後半戦、課題の燃費対策は相変わらず明確な解答が出せないまま連戦した。
88cv.minlta.jpg第5戦ディジョンはリースのが予選5番手と健闘するも決勝は序盤で2台ともリタイヤ。 ライバル・ニッサンはついに3位表彰台をゲット。
第6戦ニュルブリンクは小河も参加。予選7位も決勝はガス欠リタイヤ(もう1台もリタイヤ)。 第7戦ドニントンはリースが予選で3番グリッドを獲得。しかし決勝はまたも2台ともガス欠リタイヤ。
必至でメルセデス・ジャガー勢についていくと計ったようにガス欠。
好調なニッサン勢を嫉妬のまざった目で見るトヨタクルーだった。救いは、このレースの燃費規制が今年限りで中止になることだ。
トヨタは翌年用の3.5リットルNA/V10エンジンの開発を着々と進めている。
「来年に賭ける!」トヨタの本心はこれ一本だ。

pujoe.jpg第8戦カナダ・モントリオール。このレースには翌年からフル参戦する3.5リットルNA/V10エンジン搭載のプジョー905のデビューレースとなった(結果はリタイヤ)。 レースが赤旗中断→終了となったためリースが7位で久しぶりに完走を果たす。
しかしニッサンは、ここでもトヨタの前を行く。予選で2番グリッドを獲得。決勝も首位を快走するが、突然のレース中断・成立の時点で2位と初優勝を逃がした。
ここでニッサンに優勝されたら本社に顔向けができない、トムスの館監督は胸をなで下ろした。
最終戦メキシコ。このレースでもトヨタは予選は4番手とまずますながら決勝は2台揃ってリタイヤとなった。 優勝はメルセデス。2位はニッサン。
結局トヨタは90年世界スポーツカー選手権で開幕戦鈴鹿の4位が唯一のポイントに終わった。 takaQ.88cv.jpg

第四章 "90年JSPC、躍進するニッサン。

一方、同じ年の日本、全日本スポーツカー選手権、通称JSPCにも、トヨタとニッサンは火花を散らした。初戦鈴鹿をNo.36ミノルタが幸先良くポールトゥウインで優勝したトヨタは前述ルマンを終え、7月、富士500マイルを迎えた。第2戦が中止となったため、事実上のJSPC第2戦である。
トヨタとニッサンが正面切って争うレース、ルマンの再来と派手な宣伝に煽られてか主催者発表7万人と言うF1以上の大観衆で富士のグランドスタンドは埋まった。
クルマメーカーが威信を賭けて闘うスポーツカーレースは、洋の東西を問わず人気が高い。

予選でポールを獲得したのは長谷見のYHPニッサン。決勝は開幕戦同様、トヨタとニッサンのトップ争いで序盤は推移する。
しかし、1回目のルーティーンストップを終えるとNo.36ミノルタトヨタが独走体制に入った。そのままレースは終盤に進みミノルタトヨタの開幕2連勝か?と思われた。
しかし好事魔多し、最後のピットイン直前の残り30周と言う時点でトラブル、リタイヤとなり開幕2連勝は消えた。
nismoR90cp.jpgあとは長谷見YHPニッサンは余裕のクルージングで、長谷見にとって初、ニッサンにとって85年WEC以来5年ぶりの優勝となった。
序盤、最下位まで落ちた星野カルソニックニッサンが猛烈な追い上げを見せ、残り数周で3位走行のマツダ787を抜き去り3位へ。星野の表彰台も85年WEC以来である。
ルマンの「攻め」の勢いをそのまま持ってきたニッサンの強さが際立ったレースだった。

JSPC第4戦鈴鹿1000km、トヨタは87年に優勝したゲンのいいレースである。 このレースからトヨタは2台目のタカQ90C―V(006)を投入した。ドライバーはリース/ラファネル。
1回目のピットストップ、星野のカルソニックニッサンが燃料系トラブル発生。 大事に至らずピットアウトしたが大幅に順位を下げる。
しかし日本一速い男は猛烈に追い上げ、フロムA,トヨタ勢を抜き去り再び首位に浮上する。
その後もペースを落とすことすことなく、ガス欠もせず、星野のカルソニックニッサンがトップでチェッカーを受けるた。 ニッサンの怒濤の2連勝。
一方のトヨタはと言うと、ポルシェにすら前を行かれ、3−4位がやっとだ。しかもゴール後4位に入ったミノルタが再車検で失格(車高規定違反)となってしまう。泣き面に蜂状態のトヨタ。

続く第5戦、JSPC初開催となる菅生500km。
予選でポールを獲得したのはまたしてもリースのトヨタ。5番手までをトヨタ、ニッサンの ワークス勢が占める。このレースからサードはマシンを89C−Vに戻している。
決勝では例によって燃費に苦しみ、トヨタ勢はニッサンどころかポルシェにさえ追いていかれる始末。 再びYHPニッサンの独走優勝となる。
ニッサンは3連勝。 トヨタ勢は周回遅れの5位、6位、8位。
いよいよトヨタはかっての"日本グランプリ状態"になってきた。
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第五章 "90年JSPC最終戦、一筋の光明

最終戦富士1000kmを前に、この年のニッサンのチャンピオンは決まっていた。 話題はドライバーズタイトルが長谷見になるか星野になるか。
予選はニッサンがフロントロー独占。と、ここまで、トヨタはカヤの外状態だ。
90C-Vは基本性能が明らかに劣ることが分かったトヨタは再び89C−Vをサーキットに持ち込んだ。絶好調のニッサンR90CK勢と一年落ちの89C−Vで戦かわざるを得ないトヨタ。
誰の目にもニッサンの一方的展開が予想されたが、まさにレースは水もの、富士特有の二転三転する天候にレースは波乱の展開となった。

序盤、トヨタは期待のNo.36ミノルタ(89C―V)が早々とリタイヤ、ニッサンもYHPニッサン、オロフソンがコースアウトで大きく遅れる。
終盤になり、5位を走っていたNo.37ミノルタがリタイヤしYHPニッサンが5位に浮上。
首位をいくカルソニック・ニッサンが、このまま優勝すれば長谷見がチャンピオンとなる。
そして雨が止み、路面が乾いてきたのを見計らっての長谷見は最後のピットストップ、スリックに履き替えて勇躍ピットアウトした。このまま逃げ切る作戦だ。
しかしここで天の神はトヨタに味方した。再びサーキットに雨を降らせたのだ。
最後のピットインを引き伸ばし様子を見ていたサードの加藤真監督は、No.38サード89C―Vを素早くレインに履き替えさせピットアウト。
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雨は止むどころかさらに激しくなってきた。
首位を行くカルソニックはたまらず再度ピットイン、レインに履き替えるニッサンを横目に、ストレートを一台だけ生き残ったトヨタの89CーVが走り過ぎて勝負はついた。
WSPとJSPCで極度の不振に悩まされたトヨタが最後の最後に今季2勝目をあげた。
2位はカルソニック、YHPは5位。 星野と長谷見は同ポイントながら、優勝回数の差で長谷見がチャンピオンとなった。

<文中敬称略で使用させていただきました。>

全日本富士1000kmレース大会
開催日1990年10月06日-1990年10月07日
開催場所:富士スピードウェイ
コンディション:ドライ&ウェット
参加台数:19台
決勝
順位車番ドライバー車名
型式
タイム周回数
139R,Ratzberger
長坂 尚樹
テンソ-
トヨタ89C-V
5:57:15.832224
223星野 一
鈴木 利男
カルソニック
ニッサン 
5:58:34.539224
32S,Dickens
W,Hoy
タイサンSGal
pha962C
5:58:55.982219
455Eje Elgh
T,Mezera
OMRON
PORSCHE
5:58:01.918214
524長谷見 昌弘
A,Olofsson
YHPニッサン
R90CP
5:58:32.410214
6203M, S.Sala
片山 義美
太田 哲也
チャ-ジ
マツタ゛767B
5:58:13.498211
7201D,Kennedy
P,Dievdonne
ア-ト
マツタ゛787
5:57:50.201208
8230白鳥 哲次
藤井 修二
水谷 敬一
NWB75
7マツタ゛
5:58:14.301183
9 7T,Needell
D,Bell
アルファ
ホ゜ルシェ962C
0:00:00.000167
10 1高橋 国光
茂木 和男
ADVA
Nalpha962C
 0:00:00.000124
11 33J,Herbert
R, Rydell
武富士
PORSCHE
0:00:00.000110
12 27中谷 明彦
V,Weidler
羽根 幸浩
フロムA
ホルシェ962C
0:00:00.00098
13 85和田 孝夫
中子 修
CABIN
R90VNISSAN
0:00:00.00097
14 202従野 孝司
寺田 陽次郎
チャ-シ
゛.マツタ゛787
0:00:00.00039
18 88米山 二郎
福山 英朗
五藤 久豊
ALPHA
CIBOC90R
 0:00:00.00036
16 100G,Fouche
S,Andskar
日石トラス
ポルシェ
0:00:00.00020
17 36鈴木 恵一
黒澤 琢弥
小河 等
ミノルタ
トヨタ89C-V
0:00:00.00010
18240野上 敏彦
織田 一彦
LENOX
757MAZDA
 0:00:00.0000


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