中学生になった時、僕は密かに自慢だった事がある。
クルマの名前だ。どんなクルマでも知らないクルマはない。そう豪語できた。当時から、カタログが大好きな少年だった僕は、国産の全てのカタログを持っていた。

トヨタスポーツ800はもちろん、2000GTだって持ってた。トヨタの最高級車センチュリーも持ってた。プレジデントなんか常識。ハイエース、あります。トヨエースなんてのもあったね。ローレル、あるよ。立て目のグロリア、あんなのアメ車のまねじゃん。グロリア（プリンス）がニッサンに吸収されて日産グロリアになったんだぜ。ベルリーナ、ダイハツのクルマじゃン。フロンテ800、ああFF方式ね。スバル1000がFFの最初って云うけど、ホントはスズキの軽、スズライトが最初だよ。

クルマ博士だった。ところが、ある日、もう一人のライバルが表れた。
しかも、そいつはガイシャ＝外車にくわしいのだった。これが盲点だった--自称クルマ博士の。

ステイングレイ知っとるか！ライトがウィーーンってラジエターの上から出てくるんだぞ。 じゃあ、トヨタ2000GTと同じジャン。トヨタ2000GTはグリルに付いてるのは、フオグランプで本物のヘッドライトは暗くなったら、ボデイの中から出てるんだ。
ふ〜ん。ほんじゃ、ムスタングしっとるか、カマロ知っとるか、サンダーバードしっとるか、リンカーンしっとるか、と、アメ車の連発で攻めてきた。
実は、アメ車はさっぱりわからなかった。車種が一杯あって、どれがどれだか判らなかったのだ。 おまえ、ポルシエしらんだロ。

外車攻撃で優位にたった、このライバルは、今度はヨーロッパ車を出してきた。
ヨーロッパ車もさっぱりわからなかった、アストンマーチンが007のボンドカーだというのは知ってる。それ以外は、フェラーリーも、アルファロメオも、あまりかっこいいと思わなかった。
すると、そいつは、マトラなんとかかんとか、アルピーヌなんとかかんとか、ビィエムダブリュウがどうとか、とか言い出した。こりゃ、まずい。このまま行くと、自称クルマ博士の地位と名誉が台なしだ。
窮余の一策で浮かんだのが

「おまえ、トヨタ・ブリスカ知っとるのか。」
と、僕は思いきり、こんな事も知らんのか、という感じの言い方をした。

しばしの沈黙の後、そいつは、 「全然知らん。」
と素直に降伏した。素直なヤツでよかった、
内心、「やった！」と勝利?を確信した。 タイミングよく、授業開始のチャイムが鳴って、このクルマ知っとるか論争は、僕のやや優勢勝ち気分で幕となった。
その後、そいつとは仲良しになり、いつも二人でクルマの話をしていた。

トヨタ（日野）のブリスカは、僕のささやかなプライドを保ち、なおかつ、ライバルと対等に話せる、強い原動力になってくれたのだ。
時が過ぎ、日野という、今ではラジオ番組「走れ歌謡曲』のスポンサーとレンジャー（トラック）製造専門と思われている会社が、その昔は乗用車を作ってたということを誰も知らない時代になった。すると、突如、テレビに、この"ブリスカ"が登場した。

●五郎のクルマ、初代-純東京編

●買い替えた五郎のクルマ、蛍の帰郷編                      ↑これブリスカ、違うね

「北の国から」の黒板吾郎さんのマイカーとして、ホタルが札幌の看護学校へ通うのに、毎朝、電車の駅まで送る役目でテレビに登場した。純は東京へ就職して北海道に居なかった。
金のない吾郎さん、どうやってブリスカを買ったのかな？
ぼくは、脚本家の倉本聡に手紙を出そうかなと思った。出さなかったけど。

でも調べてみると、これ日産のピックアップという説もあるし、なんか得体が知れない。たしかに、純はテラノの中古に乗ってたし、その他、中ちゃんは日産のサファリだったし、蛍は日産マーチだった気がする。すると何だね、この番組は日産の現物支給スポンサーになっていたと思えますね。

●純のテラノ、シュウの実家で

●中畑木材のなかちゃん

●ほたるのマーチ、似合うね番組的に

●草太はバイク、美保純とカワサキKL